ロケット宇宙機モデリングラボ
東京大学JAXA

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研究内容:

当講座では,ロケット・宇宙機に関する以下の研究及び教育を実施しております.

研究分野,材料や構造,流体,燃焼など,幅広い分野に跨る.いずれのテーマも共通して,ロケット・宇宙機の開発や運用段階において問題となる実際的な課題を対象に,本質的な現象を理解した上で,課題の解決に繋がる知見を獲得することを目指している.


有人安全性の定量的評価技術の研究(酒井特任教授)

我が国における有人ロケットシステムの実現に向けて,安全技術基盤の構築を目指す.まず,安全要求の観点から,我が国固有の安全文化に適合する安全要求が何であるのかを明確にする.有人ロケットの代表例であるスペースシャトルにおけるクルーの喪失確率の推移を下図に示す.

sakai_fig1 シャトルにおけるクルー喪失確率

最終的な喪失確率は1/90程度とされるが,我が国において社会的合意を得るためには,明確な指標により明示することが求められる.この要求レベルへの適合の可否を明確にするための評価手法として,クリティカルハザードに対する定量的リスク評価技術の適用性を明らかにする.特に,有人ロケットの実現のためのキーとなる緊急脱出装置を発動させる為の検知すべき物理量の識別と異常検知・アボート判定ロジックの設定にむけて研究開発を行う.


接触・摩擦現象の解明と物理・数学モデルの構築(酒井特任教授)

今後,要求が高まる下図のような巨大パラボラアンテナを実現するためには,宇宙空間における折りたたみ構造の高精度な展開が要求される.

sakai_fig2 巨大パラボナアンテナの例(ASTRO-G)

展開構造物にはいたるところでガタがあり,また接触部での接触・摩擦現象は地球上とは全く異なる挙動を示す.一方,近年のCAE技術の進展は目覚ましく,下図のようなボルトの緩みメカニズムのような複雑な接触・摩擦現象も,有限要素解析により定量解析が可能となっている.本研究では,最新のCAE技術の適用により宇宙空間での接触・摩擦現象のメカニズムを解明し,巨大展開構造物実現へ結び付けることを目指す.

sakai_fig3 sakai_fig4ボルトの緩みメカニズムの解明


反応性熱流動現象の解明と物理・数学モデルの構築

液体ロケットエンジンや宇宙機衛星スラスター燃焼器における反応性熱流体(混合や燃焼)現象に関する研究を実施している.エンジン内は,超高圧かつ極低温から高温場と極限的な環境であり,未だ燃焼振動などエンジン開発においてクリティカルな現象の予測は困難である.このような問題を解決するため,流体,熱,化学反応を連成させた反応性熱流体シミュレーション技術を開発し,その適用によりキーとなる物理現象の理解を進める.

現在の具体的課題は,(1) 超大規模詳細反応機構を組み込むことが可能な反応性流体解析技術の確立,を中心に,(2) ロケット同軸噴射器における超高圧下極低温流体混合・燃焼解析,(3) 衛星スラスターにおけるヒドラジン/NTO着火機構と火炎構造解析が挙げられる.スパコンを活用した大規模並列解析を行う.

tera_fig1 ロケット同軸噴流のシミュレーション例

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一方で,研究対象はロケット・宇宙機に限らず,流体,熱,化学反応が密接に相互作用する物理現象,自動車HCCI燃焼やノック,水素ステーションにおける水素漏洩リスク解析なども積極的に推進している.反応性熱流体場を流体,化学反応の両観点から「理解」することで,場を「能動的に制御」できる独自のアイディアを創出していきたい.


推進薬熱流動現象の解明と物理・数学モデルの構築(井上特任准教授)

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宇宙機のエンジン(スラスター)内部流れ,特に,液体推進薬の微粒化現象に関する研究を行っている.推力が10N以上のスラスターでは,液体の推進薬噴流を互いに衝突させて微粒化を促進する方式が多く採用されている.

inoue_fig1 inoue_fig2

実機作動環境における微粒化過程には不明な点が多く,噴霧特性を予測することは未だに難しい.これまでに,数値流体シミュレーションと実験の両面から,基礎的な微粒化現象を理解するとともに,微粒化促進技術を提案してきた.

inoue_fig3 inoue_fig4

今後は,シミュレーションと実験双方の技術を高度化することで,スラスター内部現象を理解するとともに性能予測および現象制御の手法の開発を図る.




拡散火炎の燃焼振動の分岐解析(渡辺特任助教)

ロケットエンジンやタービン,ボイラー等の燃焼を伴う機器では燃焼振動と呼ばれる現象が起こることがある.
これは一般には機器の運転にとって望ましくないため様々な防止策が開発されているが,燃焼振動現象自体のメカニズムについてはまだ分かっていないことが多い.
本研究は「分岐」という視点から燃焼振動を調べ,現象の解明を目指す.

微分方程式によって与えられるベクトル場が,何らかの支配パラメタ値の変化によってその定性的な構造を変えたとき「分岐が生じた」と言われる.
例えば容器の水を下から温めるとき,下面の温度と上面の温度の「温度差」というパラメタが一定値より小さいときは水は静止したままであるが,温度差が一定値を超えると対流が起こる.
この「静止した状態」から「対流状態」への変化は分岐の典型的な例である.
分岐はパラメタ値を更に変化させていくと次々に起こり,その度に状態の対称性が失われていくのが一般的である.
対流の例でいえば,最初はロールやセル等の秩序的で定常な対流が現れるが,温度差が更に大きくなるとそれらの対流パターンが振動し始め,更に温度差を大きくすると最初規則的だった振動が不規則な振動となり,最終的にはぐちゃぐちゃに乱れて乱流となる.
ここで大切なのは,多くの場合,分岐が起こる以前のより対称性の高い状態は,分岐が起こって状態が変化した後も不安定な解として新しい状態の背後に潜んでいる,という点である.
そしてしばしば,そのような不安定解達が黒幕として実際の流れに大きな影響を与えていると考えられる.
従って背後に隠れている不安定解達を調べることによって実際に実現されている複雑な流れの本質的な部分を抽出出来る可能性がある.

本研究は様々な火炎の燃焼状態を「解」「安定性」「分岐」という観点から調べることによって現象の本質的な部分を理解することを目指している.

東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻
ロケット・宇宙機モデリングラボラトリー社会連携講座

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